なぜ社労士の勉強をするのか? - 日本のボトルネックと古臭い法律と30万円

社労士という試験があって、僕は今その勉強をしている。

社労士とは「社会保険労務士」の略称であり、企業の労務相談にのったり、就業規則を作ったり、保険の手続きを代わりにやったりする仕事である。

例えば全然仕事しない従業員がいたときに「どうやってクビにすんねん?」と社長が社労士に相談する。社労士は「まずは何度も注意した証拠を残してですね...」とアドバイスする。なんかそんな仕事だ。労基署が活躍するこのご時世、クビにするのも大変なのだ。

僕自身は社労士として働くつもりは特に無いのだけど、今の仕事と関わることもあって、年初くらいから勉強を開始した。

社労士試験は毎年8月にあって、ちなみに去年は何の勉強もせず「普段関わってるからいけるやろ」とノリで受けたらそもそも問題文が読めないという事態に陥った社労士の勉強はほとんど法律の勉強で、その用語や表現には独特の文法があるのだ。今年の目標は、とりあえず問題文を読めるようになることだ。

ただ、それ以外にも社労士を勉強している動機づけがいくつかある。

日本の財政のボトルネック社会保障である

日本の借金は1000兆円くらいあって、GDPの2倍くらいあって、その財政状況は先進国の中でも最悪のレベルだ。2018年の予算は100兆円くらいだが、その最大の割合を占めるのが社会保障費である。(次点で借金の返済金利。)

よくワイドショーで話題に出る防衛費とか公共事業費なんて予算の数%にしかならならず、実に33%を占める社会保障費に比べればインパクトは全然無い。

その社会保障費、周知の通り年々増加しており、平成の30年間で3倍になった。

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更に、政府予算に独立行政法人地方自治体などの予算も合わせた「社会保障給付費」は100兆円を越える規模である。(この金額も右肩上がりに増加していることは言うまでもない。)世界に先駆けて超高齢化社会を迎える日本で、国の存続を左右するといっても過言ではない存在が社会保障なのである、

翻って社会保険労務士の試験は文字通り「社会保険」と「労務」の2カテゴリーから成立しているが、中でも社会保険では健康保険、国民年金、厚生年金といった主要科目の勉強が必要になる。そしてそこでは制度の成り立ちからその背景・意図までの深い理解が求められる。(既に挫折しそう。

社会保障費減らせ!」「シルバー民主主義反対!」とただ叫ぶだけではなく、社会保障制度の枝葉までを含めた有機的・包括的な理解をしてみたい、と思ったのが社労士試験の勉強を始めた理由の一つだ。 

働き方がより多様化している

個人の働き方が多様化している。裁量労働制やフレックス制といった柔軟な労働制度にとどまらず、個人事業主としてクラウドソーシングで仕事を見つける、なんて働き方も今や一般的になった。「働き方改革」という言葉もすっかりバズワードになったが、これはある種当然の流れだと思う。

なぜなら超高齢化社会によって、中長期的に労働力人口が減少していくからである。

労働力人口を増やすためには労働市場への参加者を増やす必要があり、外国人や高齢者、女性などこれまで参加しづらかったセグメントを促す必要がある。そのためにはこれまでの画一的な参加ルールでなく、より市場への参加間口を広げていく必要が有るためだ。(この努力によって、直近の日本の朗々人口は超高齢化にも関わらず増加している。これはすごいと思う。)

翻って日本の働き方の憲法たる労働基準法だが、これはめちゃくちゃ古い考えに基づいている。なんせ昭和22年制定である。想定されるユースケースはもっぱら管理者に搾取される工場労働者であり、管理者は労働者を搾取する悪の権化だ。労基法を勉強していると経営者に同情するレベルである。

そう、現代の法律はいまの多様化する働き方に全く対応できていないのだ。本当の働き方改革を達成するためには各種法改正は避けられない。

一方で、もちろん労基法もバカが作ったわけじゃない。そこには条文ひとつひとつに、色んな事情、妥協、時代背景を汲み取ることができる。

これからの多様化する働き方を考える上で、「労務」のそんな側面を理解することは無駄ではないだろう。

以上、まとめると

  • 日本の未来を左右する社会保険についての理解を深めたい
  • 多様化する働き方を労務の観点から考えたい

というのが社労士試験を受験する動機づけになっているという話であったが、実際は試験に受かったら会社から30万円もらえるというのが最大のモチベーションになっていることは言うまでもない。

 30万円のためにすごいがんばるぞ!